Publications
 
 

 最終更新2020.03.04.
被引用回数はGoogle Scholarにて算出

 
原著論文

  • (原著25.)
    Genomic mushroom hunting decrypts coprinoferrin, a siderophore secondary metabolite vital to fungal cell development.
    Tsunematsu, Y.; Takanishi, J.; Asai, S.; Masuya, T.; Nakazawa, T.; Watanabe, K., 

    Org. Lett. 21, 7582-7586, 2019. 被引用回数(0), [IF=6.555, 2018]
    https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.orglett.9b02861

    文献24.に引き続き、世界で唯一の我々の研究アプローチ「担子菌キノコの遺伝子操作を基盤とした天然物生合成研究」の第二弾となる報告です。本論文では担子菌キノコであるウシグソヒトヨタケを対象とし、遺伝子破壊法によって二次代謝系を撹乱させ、coprinoferrinと命名した新たな天然物獲得について報告しています。さらに、偶発的に得られたこのcoprinoferrinが、ヒトヨタケの菌糸成長および子実体形成(つまりキノコ形成)に深く関与することを実験的に示しています。さて、「カビ」を対象とした二次代謝産物研究が世界中で盛んに繰り広げられている点を文献24.にて説明しました。その二次代謝を司る制御として、「エピジェネティックな制御」が着目、研究されています。これは先天的DNA配列に依存した遺伝子発現制御とは独立した、生体が環境に応答して生じうる後天的な遺伝子制御であり、実際にはDNAメチル化やヒストン修飾などクロマチンの化学構造変化に依存して遺伝子発現が変化する現象であります。そのようなエピジェネティック制御を改変した研究例は遺伝的改変に基づく我々の成果(文献6.)のみならず、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤等を用いた化学的改変等により、カビ由来の二次代謝系を撹乱させ新規天然物を獲得した研究例がいくつか報告されています。本研究での私たちのアプローチは、担子菌におけるエピジェネティック制御関連遺伝子の人為的改変、すなわち遺伝子破壊あるいは過剰発現により、新規天然物生産を誘導することを目的と設定しました。本研究にていくつかの遺伝子をスクリーニングした結果、laeA遺伝子を破壊したヒトヨタケ変異株において、とある化合物(=coprinoferrin)が極端に多く生産されることを見出しました。本化合物について、精製・単離し、全立体配置を含めて構造決定し、新規な天然物であることを確かめcoprinoferrinと命名しました。その化学構造から生合成遺伝子は非リボソーム性ペプチド合成酵素遺伝子であると予測し、遺伝子破壊を通じてその生合成遺伝子cpf1 (CC1G_04210)を同定しました。興味深いことに、本遺伝子破壊株は菌糸成長が極端に遅く、そして子実体(キノコ)形成が不全となる表現型を示しました。一方で本菌株にcoprinoferrinを外部から添加すると、菌糸成長・子実体形成能の回復が認められました。すなわち、coprinoferrinはヒトヨタケにおいて菌糸成長・子実体形成に重要な役割を果たしていたのです。このcoprinoferrinは種々の検討の結果、三価の鉄に結合する性質を示しました。一般にそのような化合物はシデロフォアと呼ばれ、微生物が環境中から鉄を取り込むために使用する分子種として知られています。なぜlaeA遺伝子破壊によりcoprinoferrinが多く生産されるようになったのか、その生理的な意義は依然として未解明ですが、本方法論は担子菌由来の新規天然物を探索する一つの方法になると考えられます。加えて興味深いことに、coprinoferrinの生合成遺伝子クラスターはマイタケ、ブナシメジなど多くのキノコ種において高度に保存されており、coprinoferrinあるいは同様の化合物がこれらキノコ種においても成長促進・子実体形成に重要な役割を担っている可能性が示唆されました。私たちは日頃からcoprinoferrinを経口摂取しているのです。本研究の続きは現在進行中であり、現在在学中のJT君らによって新たな知見が得られつつあります。


    (原著24.)
  • Biosynthesis of lagopodins in mushroom involves a complex network of oxidation reactions.
    Masuya, T.; Tsunematsu, Y.; Hirayama, Y.; Sato, M.; Noguchi, H.; Nakazawa, T.; Watanabe, K., 

    Org. Biomol. Chem. 17, 234-239, 2019. 被引用回数(0), [IF=3.490, 2018]
    https://pubs.rsc.org/en/Content/ArticleLanding/2018/OB/C8OB02814A#!divAbstract

    2017年から着手した研究であり、主に桝谷貴洋特任助教が実験を主導した成果となっています。本論文では担子菌(いわゆる、キノコ)ウシグソヒトヨタケCoprinopsis cinereaを研究材料とし、その生産化合物であるlagopodin類の生合成について解析しています。ここではその背景について少しだけ解説します。近年、カビ由来二次代謝産物の生合成が盛んに研究されるようになってきました(我々の研究も含む)。その理由としては、ゲノム解読技術の発展に加え、Aspergillus oryzae等の汎用異種発現宿主の開発と普及、あるいは非モデル糸状菌においても形質転換系樹立やCRISPR-Cas9等を用いたゲノム編集技術による遺伝子破壊等が当たり前に可能な状況となった点が挙げられます。世界中で多くの研究者(特に近年では中国の研究者)が本領域に参画し、多数の生合成遺伝子—酵素—生産化合物の関連情報が蓄積されつつあります。もはや多くのカビ由来天然物は化学構造と文献情報から生合成経路を概ね予想することが可能となりました(もちろん一部例外もあり、そのような分子の生合成に関して盛んに研究が行われています)。私はカビ由来天然物生合成研究で培った技術・知識をもとに、未開拓領域であるキノコを対象とした天然物研究に挑戦しようと考えました。御存知の通りキノコのなかには毒性を示す種もありますが、一方で薬用資源として用いられているキノコも数多く知られています。その代謝産物のなかには、カビ由来産物と良く似たものも含まれますが、一方で全く生合成経路が見当のつかないような化合物も多く見受けられます。これまでに数多くのキノコのゲノムが解読されていますが、遺伝子操作系が樹立されたキノコは世にほとんどなく、研究が進んでいないと捉えました。加えて、本研究の協力者である京大・農・中沢威人助教はかつてのポスドク同僚であるとともに、ヒトヨタケ研究の第一人者でもあり、彼にヒトヨタケ形質転換系・遺伝子破壊系の技術供与を頂ける点も本研究挑戦への重要な後押しになりました。本論文においても遺伝子破壊法によりテルペン環化酵素遺伝子cop6の機能を確かめています。実はこのような遺伝子破壊実験は当初思い通りに達成できず、一年近くに渡る桝谷特任助教の努力・検討の結果、現在当ラボでのルーチンとして実施できるようになりました。彼の大きな寄与があってこその成果であり、「担子菌キノコの遺伝子操作を基盤とした天然物生合成研究」という世界で唯一の研究を当ラボで立ち上げることができました。
    
    (原著23.)
  • Functional and structural analyses of trans C-methyltransferase in fungal polyketide biosynthesis.
    Kishimoto, S.; Tsunematsu, Y.; Matsushita, T.; Hara, K.; Hashimoto, H.; Tang, Y.; Watanabe, K., 

    Biochemistry 58, 3933-3937, 2019. 被引用回数(0), [IF=2.952, 2018]
    https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acs.biochem.9b00702

    文献17.および10.にて研究を行った、pseurotin生合成において3つの機能を有すPsoF酵素の機能について報告しています。本報告ではPsoFタンパク質のC末端側に存在するC-メチル化酵素ドメインについてタンパク質のX線結晶構造解析に成功しました。合成した種々の基質ミミック、およびリコンビナントにて調製した変異酵素を用いたin vitro解析により、酵素機能解明に迫っています。


    (原著22.)
  • In vitro genotoxicity analyses of colibactin-producing E. coli isolated from a Japanese colorectal cancer patient. 
    Kawanishi, M.; Hisatomi, Y.; Oda, Y.; Shimohara, C.; Tsunematsu, Y.; Sato, M.; Hirayama, Y.; Miyoshi, N.; Iwashita, Y.; Yoshikawa, Y.; Sugimura, H.; Mutoh, M.; Ishikawa, H.; Wakabayashi, K.; Yagi, T.; Watanabe, K., 

    J. Toxicol. Sci. 44, 871-876, 2019. 被引用回数(0), [IF=1.732, 2018]
    https://www.jstage.jst.go.jp/article/jts/44/12/44_871/_html/-char/ja

    文献21.にて大腸がん患者大腸がん組織より分離したコリバクチン高生産株ECKW50に関する研究を報告しています。大阪府立大学理・川西優喜准教授が主筆の論文となっています。大腸がん由来コリバクチン高生産株が確かに遺伝毒性を示すことを、CHO細胞を用いたgamma-H2AX染色および小核形成試験、サルモネラ菌を用いたumu試験により示しています。一方、作製したコリバクチン生合成遺伝子clbPの破壊株(∆clbP)においては遺伝毒性が観測されませんでした。これは遺伝毒性がコリバクチン生産依存的に引き起こされていることを示しています。
     

    (原著21.)
  • Activity-based probe for screening of high-colibactin producers from clinical samples.
    Hirayama, Y.; Tsunematsu, Y.; Yoshikawa, Y.; Tamafune, R.; Matsuzaki, N.; Iwashita, Y.; Ohnishi, I.; Tanioka, F.; Sato, M.; Miyoshi, N.; Mutoh, M.; Ishikawa, H.; Sugimura, H.; Wakabayashi, K.; Watanabe, K.,
    Org. Lett. 21, 4490-4494, 2019. 被引用回数(1), [IF=6.555, 2018]
    https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/acs.orglett.9b01345

    本論文はChemical & Engineering News, 97, 2019にてハイライトされた。
    https://cen.acs.org/biological-chemistry/microbiome/Fluorescent-probe-brings-toxin-linked/97/i29


    2016年末の渡辺教授らAMED大型予算獲得に伴い、研究室を挙げての私たちのコリバクチン研究がスタートしました。本研究では、近年大腸における発がんの原因の一つとして認識されつつあるコリバクチン生産性大腸菌を対象に、迅速・安価・正確に検出する化学プローブの開発について述べています。コリバクチンが発がんに関与することは①コリバクチン生産菌は大腸がん患者の7割に検出される、②コリバクチンの化学構造中には求電子性シクロプロパンが含まれ、これがDNAのアデニン塩基と共有結合することで変異の引き金となる、など近年数々のエビデンスが蓄積されています。我々は上記AMED研究にて日本人コホートを対象とし、コリバクチン生産菌の保菌と食事・運動・疾患との関連性について調査を行ってきました。そのような背景の下、従来、コリバクチン生産菌の検出は糞便から抽出したDNAを用いたPCR法による検定が常法として行われてきました。本研究にて開発した化学プローブはコリバクチン生産菌中に含まれる加水分解酵素ClbPと反応し、蛍光物質を放出します。この蛍光を定量することでコリバクチン生産菌を検出することが可能になりました。実際にがん患者よりランダムに得た大腸菌約200株を用いてコリバクチン生産性を評価した試験では、化学プローブ法にて正確にコリバクチン生産菌を的中することができました。その中でもとりわけ強い蛍光強度を示した大腸菌株(ECKW50)が、最も高いコリバクチン生産性を示すことを明らかにしました(実際にはコリバクチンと対で生合成されるN-myristoyl-D-Asnの定量値により評価)。

    (原著20.)
  • Enzymatic amide tailoring promotes retro-aldol amino acid conversion to form the antifungal agent aspirochlorine.
    Tsunematsu, Y.; Maeda, N.; Yokoyama, M.; Chankhamjon, P.; Watanabe, K.; Scherlach, K.; Hertweck, C.,
    Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 57, 14051-14054, 2018. 被引用回数(1), [IF=12.257, 2018]
    https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/anie.201806740


    ドイツ留学時に主テーマとして実施した研究になります。Hertweck教授・渡辺教授のご理解の下帰国後も研究を続けて本成果が得られました。本研究では糸状菌Aspergillus oryzae由来の代謝産物aspirochlorineの生合成について、phenylalanine骨格がglycine様構造へと変換される特殊なアミノ酸変換を発見した成果となります。麹菌A. oryzaeは我が国において味噌・お酒・醤油等様々な発酵食品の製造に用いられる、産業的に重要な糸状菌(カビ)です。そのA. oryzaeが生産する化合物として知られるaspirochlorineは抗真菌、抗ウイルス作用など抗生物質候補となる良い作用を示す面と、一方でヒト培養細胞に対して僅かながら毒性を示すことも報告されています。また、その構造類似化合物gliotoxinはアスペルギルス肺症を引き起こす病原菌Aspergillus fumigatusの感染因子として報告されており、aspirochlorineにもひょっとして悪い作用があるのではないか、と考えられています。また生合成中間体やその分解産物についても毒性等の評価は行われていません。aspirochlorineの生合成を正確に理解し、生産化合物に毒性の有無をきちんと評価することが必要だと考えられます。さてaspirochlorineの生合成を解明するにあたり、100 Lの培養液から僅か2 mgほどしか化合物が得られないという非常に低い生産性が問題となりました。破壊株を作製し中間体を獲得・構造決定するたびに100 Lの培養を行うのは(いくら所属機関にBiopilot Plantという大量培養部門があったとは言え)大変ハードな研究となることが予想されました。私達はこれまでの経験を活かし、まずは遺伝子改変、すなわち文献14.と同様な転写因子過剰発現によってaspirochlorine を3 mg/Lと約100倍程度に生産性を向上させることに成功しました。その後、遺伝子破壊法により各遺伝子の機能を調査しました。本論文ではaspirochlorine生合成の最終段階の4つのステップを、それぞれAclL(P450)、AclO(P450)、AclU(methyltransferase)、AclH(halogenase)が順に触媒することを示しました。なかでも前者3つがビフェニル型基質を、後者一つがモノフェニル型の基質をそれぞれ選択的に受容するという酵素の基質特異性を明らかにしました。そしてビフェニル(cyclo-Phe-Phe骨格)からモノフェニル型(cyclo-Phe-Gly骨格)への変換は当初変換酵素の存在を予想していたものの、実際にはAclOおよびAclUによってN-methoxyamide中間体が一度生じ、本分子が速やかに自発的反応を引き起こしてモノフェニル体を生成することが判明しました。本研究ではaspirochlorineの生合成解明と共に数多くの類縁新規化合物を取得することができました。毒性・安全性など各種生物活性試験を実施するための基盤ともなる研究となりました。本研究では6年制学生のNM君、MY君と共に解析を行いました。

    (原著19.)
  • Integration of chemical, genetic, and bioinformatic approaches delineates fungal polyketide-peptide hybrid biosynthesis.
    Yokoyama, M.; Hirayama, Y.; Yamamoto, T.; Kishimoto, S.; Tsunematsu, Y.; Watanabe, K.,
    Org. Lett. 19, 2002-2005, 2017. 被引用回数(4), [IF=6.492, 2017]
    https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.orglett.7b00559


    文献14.にて研究題材として取り扱ったpyranonigrinと似た構造をもつcurvupallide類、spirostaphylotricin類の生合成遺伝子クラスターを糸状菌Curvularia pallescensゲノム中に発見し、一部生合成酵素の機能を示した論文となります。C. pallescensにおいてPKS-NRPSをコードするcpaA遺伝子の破壊株を作製しcurvupallide類の生産消失が認められたこと、一方でcpaA遺伝子をAspergillus nidulansにて異種宿主発現させてcurvupallide生合成中間体を獲得したことによりcpaA遺伝子の機能を確定させました。一方、本研究で使用したC. pallescensは非常に取り扱いが難しく、数週間室温にて保管した株にてcurvupallide類の生産が消失するなど不安定な形質を示し、研究を困難にさせました。しかしながら6年制学生のMY君、平山裕一郎・山本剛両特任助教のエフォートにて論文としてまとまる成果が得られました。

    (原著18.)
  • Effects of pex1 disruption on wood lignin biodegradation, fruiting development and the utilization of carbon sources in the white-rot Agaricomycete Pleurotus ostreatus and non-wood decaying Coprinopsis cinerea.
    Nakazawa, T.; Izuno, A.; Horii, M.; Kodera, R.; Nishimura, H.; Hirayama, Y.; Tsunematsu, Y.; Miyazaki, Y.; Awano, T.; Muraguchi, H.; Watanabe, K.; Sakamoto, M.; Takabe, K.; Watanabe, T.; Isagi, Y.; Honda, Y.,
    Fungal Genet. Biol. 109, 7-15, 2017. 被引用回数(6), [IF=3.476, 2017]
    https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1087184517301470?via%3Dihub


    博士研究員時代の同僚である京大農・中沢威人助教が主として行った研究です。担子菌ウシグソヒトヨタケに対するpex1遺伝子欠損は特定培地にて紫色代謝産物の生産誘導を引き起こしました。私は本化合物の精製・構造決定にて本研究に参画しました。得られた化合物はヒトヨタケが生産する二次代謝産物lagopodin類の新規誘導体であることを突き止めました。

    (原著17.)
  • Oxidative trans to cis isomerization of olefins in polyketide biosynthesis.
    Yamamoto, T.; Tsunematsu, Y.; Hara, K.; Suzuki, T.; Kishimoto, S.; Kawagishi, H.; Noguchi, H.; Hashimoto, H.; Tang, Y.; Hotta, K.; Watanabe, K.,
    Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 55, 6207-10, 2016. 被引用回数(12), [IF=11.994, 2016]
    https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/anie.201600940


    2014年、留学直前の半年にて主に行った研究です。本論文ではpseurotin生合成における新たな1ピースを解明した成果を報告し、そしてX線結晶構造解析による酵素機能解析という新たな領域に挑戦した研究でもあります。本研究ではpseurotinの構造中ポリケチド由来部分に含まれるにシス型オレフィンの形成を司る2つの酵素PsoE・PsoFの機能について解析をしています。その機構として、まずはpseurotin生合成においても通常のポリケチド経路と同様にトランス型オレフィンが生合成され、その後の修飾反応によりalpha-beta-gamma-delta共役ジエノン構造をもつpresynerazolが生成します。このpresynerazolに対し、PsoEおよびPsoFが同時に作用することで基質alpha-beta位の二重結合をエポキシ基へ、gamma-delta位のトランス体二重結合をシス体へと一挙に変換することを示しました。PsoFは我々の先行研究により酸化・メチル化の両ドメインをもつ二機能性酵素として報告しています(文献10.)。ここでPsoEはglutathione-S-transferaseをコードする酵素であることからglutathioneを用いて単独でオレフィンの異性化を行うと考えられました。しかしin vitro解析ではそのような結果は得られず、やはりPsoFと共存下条件でのみ上記反応が観測され、反応機構理解の観点から私達を困惑させました。その反応機構に迫るべくPsoEのX線結晶構造解析を行うこととしました。本学の同一フロアにラボを構えるX線結晶構造解析の専門家である原先生・橋本先生の強力なサポートの下、タンパク質精製と結晶化を実施し、PsoEタンパク質およびそのselenoMet置換体の両結晶を取得することができました。一方、本条件で得たタンパク質構造は一部disorderしており全構造を導出するためには良質な結晶を別途作出する必要がありました。しかしこの時点で私はドイツへ向かうこととなりました。その後、結晶化条件の最適化(additive screening等)によりPsoE-presynerazol-GSHの三者複合体の結晶構造が山本剛特任助教により解明されました。結晶構造中でpresynerazolとGSHは共有結合を形成しており、PsoEによる異性化を示す一つの証拠となりました。この異性化反応ではPsoFが欠かせない役割を担っており、我々は本論文にてPsoFがpresynerazol-glutathione共有結合体の硫黄原子を酸化して異性化を促進させる反応機構を提唱しています。前例のない大変興味深い反応であり、詳細な機構解明が望まれます。

    (原著16.)
  • New natural products isolated from Metarhizium robertsii ARSEF 23 by chemical screening and identification of the gene cluster through engineered biosynthesis in Aspergillus nidulans A1145.
    Kato, H.; Tsunematsu, Y.; Yamamoto, T.; Namiki, T.; Kishimoto, S.; Noguchi, H.; Watanabe, K.,
    J. Antibiot (Tokyo) 69, 561-6, 2016. 被引用回数(8), [IF=2.237, 2016]
    https://www.nature.com/articles/ja201654


    2014年から始めた研究で、修士で卒業したHK君の仕事です。本研究で取り扱ったMetarhizium robertsiiは昆虫感染性の糸状菌として著名でありますが、私が研究に使用するきっかけとなったのは、本糸状菌のゲノム中にfumagillin-pseurotinとよく似た混合クラスターが認められたためです。その研究内容に関しては後日公開できればと思いますが、本研究ではM. robertsiiの培養液中から発見した新規化合物subglutinol CおよびDの単離・構造決定、並びに生合成遺伝子の特定、Aspergillus nidulansを異種宿主とした生合成の一部再構築について報告しています。修士2年の春まで他テーマでの研究成果に恵まれなかったHK君ですが、M2夏頃から本研究に取組み、私の留学中に成果を揃えて卒業しました。なかでも印象に残っているのは、当初私がsubglutinol Cの構造式として提示した化学構造について、誘導化反応等を用いて構造改訂を行った点にあります。残念ながら留学に出ていたためその過程を拝見することは叶いませんでしたが、修論前に一つのテーマとして仕上げてくれました。牽引する存在が不要だったのかも知れず、頼もしい限りだと感じます。さて本論文ではポリケチド−テルペンのハイブリッドであるsubglutinolの生合成酵素としてsubA (polyketide suynthase)、subD(GGPP synthase)、subC(prenyltransferase)を同定し、これらをA. nidulansに導入し異種発現させることで生合成中間体までの生合成を再構築しています。その中間体の化学安定性が悪く、単離・構造決定は当初困難を極めましたが、なんとか帰国後に引き継いで仕事をfinishさせるデータを得ることができました。

    (原著15.)
  • Regioselective dichlorination of a non-activated aliphatic carbon atom and phenolic bismethylation by a multifunctional fungal flavoenzyme.
    Chankhamjon, P.; Tsunematsu, Y.; Ishida-Ito, M.; Sasa, Y.; Meyer, F.; Boettger-Schmidt, D.; Urbansky, B.; Menzel, K. D.; Scherlach, K.; Watanabe, K.; Hertweck, C.,
    Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 55, 11955-9, 2016. 被引用回数(18), [IF=11.994, 2016]
    https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/anie.201604516


    ドイツ留学時代の副テーマとして行った研究です。本研究では麹菌Aspergillus oryzaeが生産するジクロロメチル基が特徴的な二次代謝産物dichlorodiaporthinの生合成について報告しています。本化合物の末端メチル基をジクロロ化する酵素AoiQはN末端にフラビン依存性ハロゲン化酵素ドメインを、C末端側にはメチル基転移酵素ドメインを有する二機能性酵素であることを示しました。なおC末端のメチル基転移酵素はdiaporthinの骨格構造に含まれる2つのフェノール性水酸基にメチル基を導入することをin vitroの酵素反応により示しました。このような二機能性酵素は偶然にも私が過去に見出したPseurotin生合成におけるPsoF酵素(文献10.)に続く2例目となります。本研究での私の寄与は、①AoiQが確かに一本のポリペプチドであることをRACEにて確認した点、②aoiQのA. nigerを宿主としたin vivo異種発現実験にて、AoiQが確かに二度のクロロ化反応を触媒することを確かめた点にあります。特に後者のデータは、当時in vitroにてAoiQの酵素活性(特に二度目のクロロ化)が確認できなかった共同研究者のCPさんを励ます実験データとなりました。その後の彼女、および共同研究者であるMI博士の努力・検討によって晴れてin vitroにてジクロロ化の酵素活性が確認されました。

    (原著14.)
  • Elucidation of pyranonigrin biosynthetic pathway reveals a mode of tetramic acid, fused gamma-pyrone, and exo-methylene formation.
    Yamamoto, T.; Tsunematsu, Y.; Noguchi, H.; Hotta, K.; Watanabe, K.,
    Org. Lett. 17, 4992-5, 2015. 被引用回数(17), [IF=6.732, 2015]
    https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.orglett.5b02435


    ポスドク2〜4年目頃の成果です。当時論文7.の研究のためにAspergillus nigerを宿主とした異種発現系の構築に成功し、調子に乗っていた私はA. nigerに含まれている生合成クラスターを片端から活性化させてみようと試みました。論文7.では6つの生合成遺伝子を6つのプロモーターに連結し、計42 kbの巨大プラスミドを構築し目的天然物の異種生産を達成していましたが、一方でプラスミドが巨大過ぎて作製・取り扱いが不便と感じていました。そこで2007年にHertweckらが報告した「経路特異的転写因子の強制発現によるクラスター内全生合成遺伝子の活性化」を参考としました。この方法は一つの遺伝子、しかもたった3 kb程度の簡単な遺伝子クローニングにて代謝産物が得られる点で魅力的でした。対象としてPKS-NRPS遺伝子をコアとするクラスターを選択し、An11g00250遺伝子を含むクラスターを活性化させることに成功し、組換え糸状菌の培養液が黄色に強く呈色する表現型が観測されました。そこで本培養液から黄色成分を単離・構造決定したところ、pyranonigrin Eほか約10種類の新規化合物の発見に至りました。前置きが長くなりましたが、本論文ではこれらpyranonigrin類化合物の生合成経路について主として報告しています。転写因子の過剰発現条件下において、pyranonigrin生合成遺伝子を一つ一つ破壊し、代謝産物プロファイリング、単離構造決定を繰り返し、本研究では20を超えるpyranonigrin類縁化合物(全て新規化合物)を獲得しました。一方で各生合成遺伝子をクローニングし、大腸菌を用いて調製したリコンビナントタンパク質、出芽酵母・糸状菌Aspergillus nidulansを使用した異種発現系を用いることでpyranonigrin生合成経路を解明しました。その生合成の特徴としては、①最終構造には含まれないL-serineが開始基質である、②2つの酸化酵素(FMOとシトクロムP450)による連続的なピロン環形成、③アスパルチルプロテアーゼ様酵素の引き起こす脱水反応によるserine→dehydroalanineへのアミノ酸構造編集、④生合成最終段階における酸化酵素(FMO)・還元酵素(NADPH依存性酵素)による相互変換(生理的意義は未解明)、⑤酵素非依存的な[2+2]環化反応に基づく二量化反応、など数多くの発見を報告しています。内容は盛り沢山ではありましたが、一つ一つの酵素反応について詳細な解析が足りず、焦点がぼやけてしまった内容となったことが反省されます。また獲得したpyranonigrin類の生物活性を発見できなかったことも残念に思います。本研究は優先順位の観点から現在pendingの状態にありますが、未報告の成果も残されており、近い将来まとめて報告したいと考えています。また本研究は山本剛特任助教との共同成果となります。

    (原著13.)
  • Isolation, structure elucidation, and total synthesis of tryptopeptins A and B, new TGF-beta signaling modulators from Streptomyces sp.
    Tsunematsu, Y.; Nishimura, S.; Hattori, A.; Oishi, S.; Fujii, N.; Kakeya, H.,
    Org. Lett. 17, 258-61, 2015. 被引用回数(4), [IF=6.732, 2015]
    https://pubs.acs.org/doi/10.1021/ol503340k


    博士後期過程での研究成果であり、博士論文の主題となった論文です。この論文ではがんの転移等に深く関与するTGF-betaシグナル伝達経路の阻害剤を探索し、活性物質としてStreptomyces属放線菌由来新規化合物tryptopeptin類を単離・構造決定したことを報告しています。本研究では哺乳動物細胞に対するTGF-beta刺激をルシフェラーゼ活性(つまり発光)によって評価する系を構築し、1,000以上の微生物培養エキスライブラリから活性を示す成分の探索を行いました。活性成分として得られたのはtryptopeptin類と命名した、3つのnon proteinogenicなアミノ酸から成るアシル化トリペプチド分子でありました。本分子の立体構造決定に際し、Marfey法を適応することで2つのアミノ酸、すなわちN-Methyl-L-valineとL-allo-threonineの存在を確認しました。一方でalpha,beta-エポキシケトンを含む新規な異常トリプトファン残基については本法では構造決定できず、加えて培養物から得られる量も少量であり分解反応等も困難であると考え、一念発起し全合成による構造決定を目指しました。合成に関しては、L-トリプトファンから誘導した共役エノンに対する求核的エポキシ化反応にて非立体選択的に二種のエポキシケトン体へと誘導しました。生じたエポキシ基の絶対配置については、誘導化反応と続くNMR解析によりそれぞれ確定させました。同様にD-トリプトファンを原料に二種のジアステレオマーを合成し、考えられ得る立体化学を有す4種のtryptopeptin Aを全て合成したところ、そのうちひとつが天然物とNMR、LC保持時間、比旋光度、生物活性強度の全てにおいて一致を示しました。以上により、tryptopeptin Aの全立体配置を確定することに成功しました。今思い返せばこの頃の私は何でも自分で行わないと気が済まない性分で細胞を用いた生物活性評価・単離・構造決定・全合成・化学プローブ合成やin vitro酵素アッセイと幅広く、そして好き勝手に博士課程では学ばせて頂いたと思います(迷惑も沢山かけました)。合成をやらなければ、と思ったのは博士編入直前に名古屋時代の大先輩(全合成屋)に焼肉をご馳走になりながら「ちゃんと合成も勉強しとけよ」とアドバイス頂いていたのが一点、絶対立体配置は誘導化反応を使ってしっかり決めたい(東大・F研M研のような由緒伝統ある固い仕事がしたい)と論文読んで思っていたのが二点目にあります。多くの時間が費やされましたが、この時培った合成の経験は後の生合成研究に大きく役立つこととなりました(というより生合成に興味を抱くきっかけにもなった?)。論文のまとめに多大な時間がかかった点は大いに反省すべき点であります。JACS、AGIEとレビューには回りましたが、いずれも一人の査読者から好意的なコメント頂けず撃沈となりましたが、本研究に対する好意的なレビューもあり嬉しかった記憶が残っています。そして最も嬉しかった点は、本成果にて天然物討論会で優秀発表賞を頂けたことであり、ポスターを介して多くの研究者と熱く討論したことを鮮明に覚えています。

    (原著12.)
  • Minimum information about a biosynthetic gene cluster.
    Medema, M. H.; Kottmann, R.; Yilmaz, P.; Cummings, M.; Biggins, J. B.; Blin, K.; de Bruijn, I.; Chooi, Y. H.; Claesen, J.; Coates, R. C.; Cruz-Morales, P.; Duddela, S.; Dusterhus, S.; Edwards, D. J.; Fewer, D. P.; Garg, N.; Geiger, C.; Gomez-Escribano, J. P.; Greule, A.; Hadjithomas, M.; Haines, A. S.; Helfrich, E. J.; Hillwig, M. L.; Ishida, K.; Jones, A. C.; Jones, C. S.; Jungmann, K.; Kegler, C.; Kim, H. U.; Kotter, P.; Krug, D.; Masschelein, J.; Melnik, A. V.; Mantovani, S. M.; Monroe, E. A.; Moore, M.; Moss, N.; Nutzmann, H. W.; Pan, G.; Pati, A.; Petras, D.; Reen, F. J.; Rosconi, F.; Rui, Z.; Tian, Z.; Tobias, N. J.; Tsunematsu, Y.; Wiemann, P.; Wyckoff, E.; Yan, X.; Yim, G.; Yu, F.; Xie, Y.; Aigle, B.; Apel, A. K.; Balibar, C. J.; Balskus, E. P.; Barona-Gomez, F.; Bechthold, A.; Bode, H. B.; Borriss, R.; Brady, S. F.; Brakhage, A. A.; Caffrey, P.; Cheng, Y. Q.; Clardy, J.; Cox, R. J.; De Mot, R.; Donadio, S.; Donia, M. S.; van der Donk, W. A.; Dorrestein, P. C.; Doyle, S.; Driessen, A. J.; Ehling-Schulz, M.; Entian, K. D.; Fischbach, M. A.; Gerwick, L.; Gerwick, W. H.; Gross, H.; Gust, B.; Hertweck, C.; Hofte, M.; Jensen, S. E.; Ju, J.; Katz, L.; Kaysser, L.; Klassen, J. L.; Keller, N. P.; Kormanec, J.; Kuipers, O. P.; Kuzuyama, T.; Kyrpides, N. C.; Kwon, H. J.; Lautru, S.; Lavigne, R.; Lee, C. Y.; Linquan, B.; Liu, X.; Liu, W.; Luzhetskyy, A.; Mahmud, T.; Mast, Y.; Mendez, C.; Metsa-Ketela, M.; Micklefield, J.; Mitchell, D. A.; Moore, B. S.; Moreira, L. M.; Muller, R.; Neilan, B. A.; Nett, M.; Nielsen, J.; O'Gara, F.; Oikawa, H.; Osbourn, A.; Osburne, M. S.; Ostash, B.; Payne, S. M.; Pernodet, J. L.; Petricek, M.; Piel, J.; Ploux, O.; Raaijmakers, J. M.; Salas, J. A.; Schmitt, E. K.; Scott, B.; Seipke, R. F.; Shen, B.; Sherman, D. H.; Sivonen, K.; Smanski, M. J.; Sosio, M.; Stegmann, E.; Sussmuth, R. D.; Tahlan, K.; Thomas, C. M.; Tang, Y.; Truman, A. W.; Viaud, M.; Walton, J. D.; Walsh, C. T.; Weber, T.; van Wezel, G. P.; Wilkinson, B.; Willey, J. M.; Wohlleben, W.; Wright, G. D.; Ziemert, N.; Zhang, C.; Zotchev, S. B.; Breitling, R.; Takano, E.; Glockner, F. O.,
    Nat. Chem. Biol. 11, 625-31, 2015. 被引用回数(366), [IF=12.709, 2015]
    https://www.nature.com/articles/nchembio.1890


    ドイツ留学時代の仕事です。本プロジェクトはAntiSMASHを始め数々のプログラムを作製したことで知られるMarnix Medema博士によって取りまとめられた「天然物生合成遺伝子クラスターにおけるデータベース」の構築を主題にしています。近年のDNAシーケンス技術の革新に伴い、数多くの生物のゲノムが明らかとなっています。そして天然物生合成に関わる遺伝子クラスターも次々と発見され、各天然物生合成の仕組みも続々と解明されつつあります。一方で、ある天然物の生合成機構や遺伝子クラスターを知りたい・調べたいとき、最も有効な方法は過去の文献を読み漁り学習することでした。しかし、一つの化合物について莫大な情報のなかで正しい情報を取り出し生合成の仕組みを理解するためには莫大な時間・労力が費やされ、また専門的な知識も要求されます。また多数の化合物について同様に行うことは膨大な時間が費やされます。天然物研究とは少し距離の離れた分野の研究者(や経験の浅い学生含む)がこのような作業を行うことはもはや苦痛を伴うでしょう。そのような背景の中、本プロジェクトでは天然物生合成遺伝子クラスターに関する最低限の情報をデータベース化しています。MIBiGと命名された本データベースでは化合物名を検索すると対応する遺伝子クラスター、各生合成遺伝子の配列、酵素機能情報、報告された元文献等への簡易なアクセスが可能になっています。と、偉そうに述べてきましたが、私が寄与したのは一部の天然物のデータベース作製であり、本当に偉いのは責任著者と考えます。留学先のHertweck教授よりこの仕事に参画するチャンスを頂きMarnix博士の名前を初めて知ることとなりましたが、自分より3つも年下で(当時私は31歳)大変素晴らしい成果(もはやAntiSMASHは天然物化学研究には欠かせないツールではないでしょうか)を出されており、感銘するとともに大きく刺激を受けました。

    (原著11.)
  • Methylation-dependent acyl transfer between polyketide synthase and nonribosomal peptide synthetase modules in fungal natural product biosynthesis.
    Zou, Y.; Xu, W.; Tsunematsu, Y.; Tang, M.; Watanabe, K.; Tang, Y.,
    Org. Lett. 16, 6390-3, 2014. 被引用回数(20), [IF=6.364, 2014]
    https://pubs.acs.org/doi/10.1021/ol503179v


    UCLAのYi Zou博士、Yi Tang教授らとの共同研究です。本論文ではAspergillus fumigatusにおけるpseurotin生合成酵素について報告しています。鍵となったのはPKS-NRPS hybridをコードするpsoAに対し出芽酵母での異種発現に成功し、リコンビナントタンパク質を獲得した点にあります。上記遺伝子は12 kb、タンパク質の分子量は約450 kDaの超巨大タンパク質です。私の知る限り、このクラスのタンパク質が取得・機能解析された例は同じくTang教授らによるApdA (aspyridone生合成酵素)の研究しかありません(2020年3月現在)。本研究ではPsoA(PKS-NRPS hybrid)、PsoF(FMO–methyltransferase bifunctional enzyme)、PsoB(alpha,beta-hydrolase)、PsoG(membrane-bound oxidase, putative) の4つの酵素にてpseurotinの基礎骨格をもつazaspireneが生成することを示しました。一方で各酵素の詳細な性質については今後の解析が待たれます。Coming soon.

    (原著10.)
  • Elucidation of pseurotin biosynthetic pathway points to trans-acting C-methyltransferase: generation of chemical diversity.
    Tsunematsu, Y.; Fukutomi, M.; Saruwatari, T.; Noguchi, H.; Hotta, K.; Tang, Y.; Watanabe, K.,
    Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 53, 8475-9, 2014. 被引用回数(34), [IF=11.261, 2014]
    https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/anie.201404804

    本論文はNature Chemical Biology 10, 606, 2014. [IF=12.996, 2014]にてハイライトされた。
    https://www.nature.com/articles/nchembio.1596


    ポスドク2~3年目にかけて行った成果であり、背景は論文8.にて一部紹介しています。本論文ではAspergillus fumigatusの生産する天然物pseurotin類の生合成機構について述べています。遺伝子破壊実験により包括的にpseurotin生合成遺伝子を調査し、それぞれの遺伝子破壊株から得られた化合物の化学構造からその生合成経路を推定・解明しました。特に興味深い知見となった点を以下に述べます。通常ポリケチド合成酵素中に含まれるC-methyltransferaseドメインですが、pseurotin生合成酵素PsoAにおいてはその触媒機能が失われていました(SAM結合配列GXGXGが保存されていない)。その代替として別の遺伝子産物PsoFのC末端ドメインが、PsoAによるポリケチド伸長途中でC-メチル化を触媒することを解明しました。その証明のために複数段階の基質合成を行いましたが、これが実施できたのも博士後期過程の経験にあると実感しています。このPsoFタンパク質はN末端にはフラビン依存性酸化酵素(FMO)ドメインを有しており、詳しくは後の論文17.で解明されることとなりますが、生合成後期において不飽和ケトンのエポキシ化を担う酵素であると証明しています。つまり、PsoFの一本のポリペプチドはN末端、C末端が別々の反応を触媒し、そして不連続的に働くという、代謝経路における珍しい反応形式の発見に至りました。この点が”It takes two”という題名にてNature Chemical Biology誌ハイライト欄にて紹介された点も嬉しい経験となりました。その他にも、本論文ではシトクロムP450であるPsoD、メチル基転移酵素であるPsoCの機能を解明し、合わせて報告しています。本研究では多くの新規化合物を遺伝子破壊株から取得し、構造決定しました(計10以上)。最も困難だったのは、これら化合物が生合成中間体か派生化合物shunt productかを見極める点にありました。Pseurotin生合成酵素のうちいくつかは基質特異性が寛容であるためか、数多くのshunt productが得られました。視点を変えればPseurotin類似構造をもつ新規化合物(いわゆる、既知チョロ)が数多く得られ、化合物構造多様性(Chemical space)を拡張させる点で良かったのですが、それに対し、shunt化合物の構造は生合成経路、すなわち生合成酵素が働く順番の解明を複雑化しました。今回の研究では精製酵素・酵母遺伝子発現系(特に膜酵素P450)を用いた解析にて一つ一つの経路を確かめていきました。なお、現在では得られた化合物が中間体かshunt productかを確かめるため、chemical complement試験を頻用しています(文献8.にて使用)。
    裏話:本論文はfumagillinとpseurotinの生合成遺伝子が染色体上で混合している(Intertwined cluster)ことを踏まえ、文献8.とback to backにてJACS誌に投稿しました。しかしこちらの論文はEditor rejectionでした(https://computational-chemistry.com/top/blog/2019/03/25/jacs/)。その後、AGIE誌に投稿、アクセプトまで2週間(+NCBハイライト)と順調に進みました。JACSの難しさを実感しました。

    (原著9.)
  • Structure and biological activity of 8-deoxyheronamide C from a marine-derived Streptomyces sp.: heronamides target saturated hydrocarbon chains in lipid membranes. 
    Sugiyama, R.; Nishimura, S.; Matsumori, N.; Tsunematsu, Y.; Hattori, A.; Kakeya, H., J. Am. Chem. Soc. 136, 5209-12, 2014. 被引用回数(33), [IF=12.113, 2014]
    https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/ja500128u

    博士後期課程時の研究であり、8-deoxyheronamide Cの単離・構造決定にて寄与しました。微生物抽出物中より、細胞の形態変化を引き起こす化合物の探索を行っていました。あるStreptomyces属放線菌の抽出エキスをHT1080等の哺乳動物細胞に処理すると、細胞質に多くの水疱が現れる表現型を示しました。そこで、この活性を指標に化合物の単離・精製を行ったところ、新規化合物である8-deoxyheronamide Cを発見するに至りました。本化合物は様々な細胞種に対しても水疱化を引き起こしました。しかし、論文投稿準備する以前の段階にて、オーストラリアの研究グループによって構造と活性(水疱形成)がOrg. Biol. Chem.誌に報告され、失意の27歳の誕生日となりました(2010年8月26日)。一方、本論文の筆頭著者の杉山くん、西村助教らは、分裂酵母に対する活性を指標に単離を進めた結果、偶然にも8-deoxyheronamide Cが活性成分であることを突き止めました。その後の詳細な解析についてはここでは述べませんが、本分子が特定の膜脂質と強固に結合する性質について解析・報告しています。


    (原著8.)
  • Generation of complexity in fungal terpene biosynthesis: discovery of a multifunctional cytochrome P450 in the fumagillin pathway.
    Lin, H. C.; Tsunematsu, Y.; Dhingra, S.; Xu, W.; Fukutomi, M.; Chooi, Y. H.; Cane, D. E.; Calvo, A. M.; Watanabe, K.; Tang, Y.,
    J. Am. Chem. Soc. 136, 4426-36, 2014. 被引用回数(59), [IF=12.113, 2014]
    https://pubs.acs.org/doi/10.1021/ja500881e


    ポスドク2~3年目にかけて行った成果であり、UCLAのYi Tang教授、Hsiao-Ching Lin博士との共同研究成果です。この論文では血管新生阻害剤fumagillinの全生合成経路を明らかにし、なかでもシトクロムP450酵素の引き起こす連続した4段階の酸化反応におけるメカニズムについて特に詳しく述べています。我々のグループでは、①fumagillolに至るまでのFma-C6H(α-ketoglutarate依存型酸化酵素)、Fma-MT(メチル基転移酵素)、Fma-KR(ポリケチド合成酵素におけるケトリダクターゼドメインと相同性)におけるそれぞれの酵素機能証明と基質特異性について、②アシル化された新規中間体prefumagillinの単離・構造決定と、本中間体に対するFma-ABM(膜結合型酸化酵素)による炭素-炭素二重結合開裂を介したfumagillinへの変換、について注力して解析を行いました。その背景がいろいろありましたので以下に述べます。論文7.の研究を行うにあたり、糸状菌Aspergillus fumigatusの形質転換法を習得する必要があると考えました。そこで、機能既知の生合成遺伝子をノックアウトする実験をポジティブコントロールとして設定しました。対象としたのはpseurotinの生合成遺伝子Afu8g00540(psoA)でありましたが、一方で当時報告されていなかったfumagillinの生合成遺伝子もついでに探してみようということで、候補としてAfu8g00520 (機能未知の膜7回貫通型プレニル基転移酵素をコード、後にFma-TCと命名された)を選定しました。その結果、Afu8g00540破壊株においてpseurotinの生産が、Afu8g00520破壊株においてfumagillinの生産停止が認められ、ポジコンがワークすることを確認したとともに、棚からぼたもち的にfumagillinの生合成遺伝子を特定することができました(2012年春)。その後、当時四年生だったMFさんに手伝ってもらい、fumagillinの生合成遺伝子を網羅的に破壊し、生合成の概要を掴むことができました。成果を携え意気揚々と農芸化学会での発表を控えたその一週間前、JACS誌のASAPにfumagillin生合成の同定論文がYi Tang教授、Hsiao-Ching Lin博士らによって発表されました(2013年春)。私も共同研究者も失意を覚えました。しかしながらその後、我々の成果と先方の成果をマージし、さらに共同にて解析を進めることで本論文を報告することができました。Tang教授によると、fumagillinの生合成遺伝子を特定していたのは当時少なくとも4グループほどあり、本分子がいかに着目された分子かおわかり頂けると思います。実際に本化合物の半合成類縁化合物(例えばTNP-470など)は抗がん剤として第二相臨床試験まで進められていましたし、別の化合物はZafgen社によって抗肥満薬として臨床試験が現在実施されています。本研究を通じて私達はfumagillinの類縁化合物を数十種類獲得することができました。半合成とは異なる炭素骨格を持ったこれらの化合物空間(ケミカルスペース)を巧く利用して天然物創薬へとつなげたいと考えています。

    (原著7.)
  • Distinct mechanisms for spiro-carbon formation reveal biosynthetic pathway crosstalk.
    Tsunematsu, Y.; Ishikawa, N.; Wakana, D.; Goda, Y.; Noguchi, H.; Moriya, H.; Hotta, K.; Watanabe, K.,
    Nature Chemical Biology 9, 818-25, 2013. 被引用回数(79), [IF=13.217, 2013]
    https://www.nature.com/articles/nchembio.1366


    ポスドク1~2年目にかけて主テーマとして行った研究です。本研究では糸状菌Aspergillus fumigatusが極微量に生産するスピロ環含有天然物spirotryprostatin類の生合成経路を解明し、異種発現により培養生産化させることに成功しました。Spirotryprostatin類は極微量にしか生産されないと報告されており、実際にA. fumigatusの培養液中には観測されませんでしたので、遺伝子破壊による生合成遺伝子の特定が困難だと考えました。そこで異種生物である出芽酵母および糸状菌Aspergillus niger内にてまずは生合成前駆体の生合成経路を構築し、その後、推定されるスピロ環形成酵素遺伝子を追加導入してスピロ環形性能を評価するスクリーニング系を考案しました。結論としては、構造が非常に類似したspirotryprostatin AおよびBは、全く別々の酵素であるFqzB(フラビン依存性酸化酵素)およびFtmG(シトクロムP450)によってそれぞれ形成される、という全くもって予想外な結果が得られました。スピロ環を形成する酵素としては世界初の発見となりました。いずれの酵素反応も酸化反応であり、生成した不安定中間体(それぞれエポキシド中間体およびラジカル中間体)がセミピナコール型の転位反応によって化学的安定性の高いスピロ環が構築されると考えられ、部分的にですがその仮説を支持するデータも報告しています。加えて、A. niger内にてspirotryprostatin類を異種発現生産させることに成功し、その収量は1.0 mg/L程度と元の生産菌の400倍以上の生産性を達成し、持続的な化合物供給が可能であることを示しました。この研究の出発点は岡山大学守屋先生の出芽酵母発現システムを用い、当時大学院生のNI君がNRPS遺伝子ftmAを発現させてbrevianamide Fを多量生産させた成果にあります。残念ながら当初目標としていた出芽酵母においてはメチル基転移酵素FtmDの酵素活性が極端に低く、spirotryprostatin類の生合成系再構築は叶わず、最初の一年は特に成果が得られませんでした。しかし、これを別の方法により解決することを目指し、最終的にはA. nigerを宿主とした系を樹立することができました。その過程では遺伝子導入方法、プロモーター、選択マーカー、培養条件など様々な検討点がありましたがNI君と二人三脚で一つ一つ課題解決をすることができ、本成果となりました。論文投稿後約9ヶ月に渡って二度のリバイスを行い、アクセプトまで辿り着いた良い経験となりました。

    (原著6.)
  • Targeted disruption of transcriptional regulators in Chaetomium globosum activates biosynthetic pathways and reveals transcriptional regulator-like behavior of aureonitol.
    Nakazawa, T.; Ishiuchi, K.; Sato, M.; Tsunematsu, Y.; Sugimoto, S.; Gotanda, Y.; Noguchi, H.; Hotta, K.; Watanabe, K.,
    J. Am. Chem. Soc. 135, 13446-55, 2013. 被引用回数(30), [IF=11.444, 2013]
    https://pubs.acs.org/doi/10.1021/ja405128k


    同僚ポスドク中沢さんの仕事で、糸状菌Chaetomium globosumに対し、それまで実施報告例の無かった形質転換や遺伝子破壊を可能としました。本研究で樹立された菌株CGKW14は相同組換え頻度が非常に高く、二種の選択マーカーが使用できることから、今後の研究を大きく発展させる基礎となりました。また本論文では二次代謝制御因子の破壊により、通常培養時では認められない数多くの二次代謝産物の生産誘導を報告するとともに、C. globosum由来代謝産物の生合成遺伝子を多数特定するに至りました。

    (原著5.)
  • Overexpressing transcriptional regulator in Chaetomium globosum activates a silent biosynthetic pathway: evaluation of shanorellin biosynthesis.
    Tsunematsu, Y.; Ichinoseki, S.; Nakazawa, T.; Ishikawa, N.; Noguchi, H.; Hotta, K.; Watanabe, K.,
    J. Antibiot (Tokyo) 65, 377-80, 2012. 被引用回数(12), [IF=2.191, 2012]
    https://www.nature.com/articles/ja201234


    ポスドク一年目の仕事で、当時渡辺研究室では人海戦術にて糸状菌Chaetomium globosumに含まれる休眠型遺伝子を覚醒させる取組みに注力していました。そのうち転写因子をコードするCHGG_08397という遺伝子をアクチンプロモーター支配下に置き活性化させたところ、ポリケチド合成酵素を含むクラスターが活性化し、培養液が紫色に強く呈色することを観測しました。生産された化合物はshanorelinという既知化合物でしたが、その生合成遺伝子を初めて同定することに成功しました。

    (原著4.)
  • Tumescenamide C, an antimicrobial cyclic lipodepsipeptide from Streptomyces sp.
    Kishimoto, S.; Tsunematsu, Y.; Nishimura, S.; Hayashi, Y.; Hattori, A.; Kakeya, H.,
    Tetrahedron 68, 5572-5578, 2012. 被引用回数(12), [IF=2.803, 2012]
    https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S004040201200628X


    博士後期過程時の仕事です。別の目的で単離実験を行っていた放線菌Streptomyces sp.の抽出物から、メタノール溶解時にゲル状の性質を示す化合物が得られました。本化合物の構造決定を行ったところ、新規構造を示すアシル化環状ペプチドであることが判明しました。その構成アミノ酸はMarfey法により立体構造を決定し、アシル基の立体構造については化学合成により構造を決定することができました。

    (原著3.)
  • Establishing a new methodology for genome mining and biosynthesis of polyketides and peptides through yeast molecular genetics.
    Ishiuchi, K.; Nakazawa, T.; Ookuma, T.; Sugimoto, S.; Sato, M.; Tsunematsu, Y.; Ishikawa, N.; Noguchi, H.; Hotta, K.; Moriya, H.; Watanabe, K.,
    ChemBioChem 13, 846-54, 2012. 被引用回数(53), [IF=3.740, 2012]
    https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/cbic.201100798


    ポスドク一年目の仕事で、当時渡辺研究室に在籍した計4名のポスドクと学生の合作です。本研究では糸状菌(カビおよびキノコ)のゲノム中に含まれる機能未知生合成遺伝子について、出芽酵母を宿主として異種発現させるシステムを構築しました。還元型PKSやNRPS等多様な遺伝子を酵母で発現させ、化合物を獲得できることを示しました。私は特にNRPS産物であるfumiquinazoline Fの単離・構造決定において本研究に大きく寄与しました。

    (原著2.)
  • Symbiospirols: novel long carbon-chain compounds isolated from symbiotic marine dinoflagellate Symbiodinium sp.
    Tsunematsu, Y.; Ohno, O.; Konishi, K.; Yamada, K.; Suganuma, M.; Uemura, D.,
    Org. Lett. 11, 2153-6, 2009. 被引用回数(19), [IF=5.420, 2009]
    https://pubs.acs.org/doi/10.1021/ol900299x


    M2の時に行った研究です。扁形動物ヒラムシから単離された渦鞭毛藻Symbiodinium sp.は分子量2,000を超えるsymbiodinolideや、特徴的な3環性骨格をもつsymbioimineを生産します。本研究ではSymbiodinium sp.抽出物のうち未探索であった脂溶性画分より分子量1206の化合物symbiospirol Aおよび二種の類縁化合物を単離・構造決定しました。NMRによる構造決定には半年間以上もの苦戦を強いられましたが、先行研究を参考に重溶媒CD3OD:pyridine-d5 = 1:1を使用した際に良好なシグナル分離が得られることを突き止め、加えて二種類の分解反応により構造決定を達成しました。構造決定が難航した理由は自身の経験不足が一番ですが、symbiospirolの分子内には炭素12個ほどからなる繰り返し構造が存在していた点も挙げられます。先の重溶媒の使用により、僅かながらシグナルが分離し、問題解決となりました。得られた化合物量は100 mg以上と比較的多く、毎晩のように800 MHzのNMRを予約していろいろな測定を行ったのが懐かしい思い出です(当時はグラジエントシムの存在を知らず、毎晩シゲミ管のシム合わせを一時間近く行っていた)。このとき、自分で機械のマニュアルを読んで使用する癖がついたように思います。また、上村先生に「この分解反応をやれ」と言われ、素直に従ったら良い結果が得られ、やっぱすごいな、と思いました。M2の修論後にドラフトを書き上げ、大野さん(現・工学院大学・准教授)に託して卒業し、主筆第一号の成果となりました。

    (原著1.)
  • Structure of zamamistatin - a correction.
    Kita, M.; Tsunematsu, Y.; Hayakawa, I.; Kigoshi, H.,
    Tetrahedron Lett. 49
    , 5383-5384, 2008. 被引用回数(11), [IF=2.538, 2008]
    https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0040403908012422


    M1~M2春にかけて取り組んだ成果です。石垣島のリーフ内にて、とある黄色いカイメンを岩から剥がして採取したところ、あっという間に紫色に変色するという興味深い現象が観測されました。そのカイメンを抽出したところP388マウス白血病細胞に対して増殖抑制が確認されたので、この活性を指標に単離を進めました。その活性化合物は座間味島産カイメンより発見された二量化化合物zamamistatinであることが判明しました。一方で本化合物は数年前に合成化学的な手法とNMRスペクトルの解釈により、当初報告された構造式と異なると提唱されていました。そこで単離した化合物について、結晶化による構造決定を目指しました。化合物そのもの自体の結晶は得られませんでしたが、その分解物についてX線結晶構造解析を行うことができました。本結晶構造はzamamistatinの半分ほどの分子量をもつ単量体であり、zamamistatinの二量化構造に疑念が抱かれました。最終的にNMRスペクトルの比較から、zamamistatinと考えられた二量化構造は誤りであり、その本体をaeroplysinin-1と結論付けました。Aeroplysinin-1はESI-MSにおいて[2M+Na]+に高い強度のピークが観測され、これが混乱の原因となりました。メインの研究テーマではありませんでしたが、北さん(現・名古屋大農・教授)にお世話になり論文化することができました。

 
総説、著書、解説など
 

  1. Oxidative modification enzymes in polyketide biosynthetic pathways.,
    Tsunematsu, Y.; Hirayama, Y.; Masuya, T.; Watanabe, K.;
    Comprehensive Natural Products III: Chemistry and Biology, in press

  2. 21世紀における構造未決定天然物 大腸発がんリスク因子コリバクチンの生合成,
    恒松雄太;
    有機合成化学協会誌, 76, 490–493, 2018.

  3. 新規疾患治療法開発のヒントは「微生物の生存戦略」に隠されている?
    恒松雄太;
    ファルマシア, 54, 458, 2018.

  4. Elucidation of biosynthetic pathways of natural products.,
    Kishimoto, S.; Tsunematsu, Y.; Sato, M.; Watanabe, K.;
    Chem. Rec. 17, 1095-1108, 2017. 被引用回数(5), [IF=4.891, 2017]

  5. Evaluation of biosynthetic pathway and engineered biosynthesis of alkaloids.,
    Kishimoto, S.; Sato, M.; Tsunematsu, Y.; Watanabe, K.;
    Molecules, 21, 1078-1097, 2016. 被引用回数(17), [IF=2.861, 2016]

  6. Echinomycin biosynthesis.,
    Sato, M.; Nakazawa, T.; Tsunematsu, Y.; Hotta, K., Watanabe, K.;
    Curr. Opin. Chem. Biol. 17, 537-545, 2013. 被引用回数(26), [IF=7.652, 2013]

  7. Yeast-based genome mining, production and mechanistic studies of biosynthesis of fungal polyketide and peptide natural products.,
    Tsunematsu, Y.; Ishiuchi, K.; Hotta, K.; Watanabe, K. ;
    Nat. Prod. Rep. 30, 1139-1149, 2013. 被引用回数(41), [IF=10.715, 2013]

  8. 出芽酵母発現システムを利用した天然物の生物合成,
    恒松雄太, 守屋央朗, 渡辺賢二,
    化学と生物 50, 163-174, 2012.

  9. 生合成遺伝子クラスターの高度強制発現による合成生物学が拓く有用天然物の創製,
    中沢威人, 恒松雄太, 石川格靖, 渡辺賢二,
    生物工学会誌 90, 289-292, 2012.

 

 

 
糸状菌分子生物学研究会若手の会第7回ワークショップ(北海道)での招待講演
「糸状菌ゲノムが拡張する天然有機化合物研究」に対するQ&A  リンク