マイナスからプラスを生み出す環境負価低減バイオプロセスの開発
静岡県立大学 食品栄養科学部 環境生命科学科 /大学院 環境科学専攻 English |
微生物を用いた再生可能資源(バイオマス)からのファインケミカル生産
我々は、現在は廃棄または有効に活用されず、環境に負荷を与えている食加工残渣や非可食部位などの再生可能資源(食品系バイオマス)を原料に、酵母などの微生物を用いて、高付加価値化合物を生産し、資源価値を高める研究を行っています。ターゲットとしている生産物としては、機能性食品、食品添加物、飼料添加物、植物活性化剤や肥料など、人・動物・ペット・農林水産生物等の健康を維持・増進するファインケミカルです。また、省エネルギー、高効率かつ環境にやさしい方法で、持続可能資源の処理や微生物変換を行う環境負荷低減バイオプロセスの確立を目的に、微生物宿主(細胞工場)の改良に取り組んでいます。これらの研究を通し、「環境が食を育み、食がヒトを育み、そしてヒトが環境を育むサイクル」の推進を目指しています。
光エネルギー利用型バイオプロセスの開発
石油資源の枯渇が現実性を増し、生体や環境にやさしいクリーンな代替エネルギーが望まれる時代にあって、無尽蔵に存在する光エネルギーを利用する太陽電池や、光エネルギーを有機物として蓄積した植物体をエネルギー源や化成品の発酵原料として用いようとするバイオリファイナリーの研究が盛んです。一方、我々は、増殖速度が速い大腸菌や出芽酵母などの発酵微生物に代謝工学や合成生物工学的な改良を施し、様々な有用物質の生産性を向上させる研究を行っています。しかし、目的物質の生産性が向上するにつれ、自然界での暮らしでは考えられない偏った重労働を課せられたこれらの発酵微生物が、しばしば細胞内エネルギー(ATP)不足に陥り、目的物質の生産性が頭打ちする事態に直面してきました。そこで、我々は、本来は光合成能を持たないこれらの発酵微生物に、人工的に光合成能の一部である光リン酸化能を賦与することで人工光合成細胞を創製し、光エネルギーを利用可能にする新しい光駆動有用物質生産プロセスの開発を目指しています。
海洋資源や海洋微生物を利用したマリンバイオテクノロジー研究
近年、養殖は世界の食料不足の解決策の一つですが、高騰する水産系飼料用魚粉タンパク質から、持続可能な植物性タンパク質等へ転換した場合には、不足する成分等を補填する必要があります。また、養殖場での水生生物のストレスを軽減したり病気を予防する成分の添加が重要です。そこで、本研究室では、食品加工残渣と海水を原料に、これらの有用成分を高含有する海洋由来のマリン微生物を培養し、水産系補助飼料として生産するサーキュラーマリンバイオエコノミーを目指しています。