光環境生命科学研究室 ゲノムの傷と修復の研究―がんや老化の予防を目指して
地球上に生物が誕生して以来、生物と“光”は深い繋がりを持ちながら現在に至っています。光がなければ多様な生物の進化はなしえなかったし、ましてや我々人間も生まれていないでしょう。現在では、生活の様々な部分に光が利用されています。ところが、光は両刃の剣です。光の一部は、生体を損傷し悪影響を与える場合があり、紫外線発がんはその代表例です。本研究室では、この紫外線がもたらす発がんや老化に関する研究を行っています。特に私たちは紫外線がもたらすDNA損傷の修復機構を中心に、それに影響する環境要因を探索しその機構を解析しています。
○研究1:環境因子によるヒストン修飾変化と紫外線DNA損傷修復の関係
DNAはヒストンに巻き付きクロマチンを形成しているため、ヒストン修飾に依存したクロマチンの構造変化によりDNAの傷の修復速度は変化すると考えられます(図1)。様々な環境因子によるヒストン修飾変化と紫外線DNA損傷修復について、分子・細胞生物学的手法を用い検討していきます。
○研究2:エピジェネティック変化を指標とした化学物質リスク評価法の開発
クロマチン構造の変化は特定の遺伝子群の誘導、抑制を引き起こし、発がん、老化など様々な疾患に関与しています。クロマチンを構成するヒストンの化学修飾パターンを検討し、それを利用した新規の化学物質リスク評価法の構築を目指しています。
○研究3:光老化の分子メカニズムの解明
長波長紫外線の皮膚老化への影響について、ヒストン修飾を中心に検討しています。また、老化した細胞における紫外線DNA損傷修復変化について解析しています。
○研究4:水道水消毒副生成物の毒性機序の解明
水道水消毒副生成物のヒトへの健康リスク解明のため、ヒストン修飾と細胞周期進行攪乱を中心に評価しています。