実習(基礎環境科学実験(2年)、環境生命科学実験(3年))
2022.5/17-20と6/7-10の2週に渡って、食品栄養科学部環境生命科学科3年生が、環境生命科学実験Ⅱの生態発生遺伝学研究室担当の実習を行いました。本実習は静岡ガス株式会社の静岡支社の敷地内にある2つのビオトープに生息する静岡メダカ(ミナミメダカ:Oryzias
latipes)とマシジミ(Corbicula leana)を用いて遺伝子レベルでの種内多様性の解析、それらを考慮に入れた種の保全方法を学ぶことを目的としています。
日本に生息するメダカは1999年に環境庁(現環境省)レッドリストにおいて絶滅危惧II類に指定された後、現在まで野生の生息地が減少し続けています。日本にはミナミメダカとキタノメダカ(O.
sakaizumii)の2種がおり、ミトコンドリアDNAのチトクロームb遺伝子のDNAの塩基配列によって、12と3の“地域型”に分類されていることから、遺伝的な多様性が高く、それぞれの地域型に固有のメダカが生息していることを意味します。その地域型の1つは静岡県中東部のみに生息する「静岡メダカ」です。現在、静岡市内では本ビオトープ以外に静岡メダカの生息は確認することはできておらず、本ビオトープである「南の池」は「静岡メダカ」が多数生息する希少な生息地です。また、「西の池」に生息するマシジミも外来種であるタイワンシジミによって近年生息地を減らし続けている希少な種です。
1日目は、南の池で静岡メダカの採集、西の池の複数個所のマシジミの個体数調査から最適な生息環境の推定を行いました。
2-4日目は、1日目に採集した静岡メダカと日本に生息するメダカ(ミナミメダカとキタノメダカ)の複数系統の“地域型”の判定を行いました。その方法はメダカの尾鰭からDNAを抽出し、PCRでミトコンドリアDNAのチトクロームb遺伝子領域を増幅し、制限酵素で消化した断片の長さから地域型を決定しています。
これまで本研究室との共同研究によって継続的にDNAレベルでの「静岡メダカ」のモニタリングを行ってきましたが、今年も調査した全てのメダカが「静岡メダカ」であることが確認できました。今後も継続的なモニタリングによってDNAレベルでの「静岡メダカ」の保全を行っていきたいと考えています。
【関連リンク】
静岡ガス株式会社ホームページ https://www.shizuokagas.co.jp/page.jsp?id=47352
文責:環境生命科学科 生態発生遺伝学研究室 教授 小林 亨、助教 明正 大純