令和4年5月30日に食品栄養科学部環境生命科学科3年生が研修旅行をおこないました。今回の研修旅行は「西伊豆のジオパークと地域食」をテーマとして、静岡県賀茂郡の松崎町、西伊豆町を訪れました。
東名高速道路・伊豆縦貫道を通り、土肥経由にて西伊豆町の堂ヶ島に到着しました。ここで、現地ジオガイドであり静岡県立大学「地域みらいづくりフェーロー」である佐野勇人氏に、伊豆ジオパークである三四郎島と天窓洞について、ご案内していただきました。特に、研修当日の午前中は、三四郎島のトンボロが最も露出する大潮の干潮時であったことから、トンボロを壮大なスケールで体験することができました(写真1)。このトンボロは、砂ではなく礫で形成された世界的にも珍しいものであり、強い西風、三四郎島本体の火山岩性地質など複数の環境要因が重なることではじめて形成されるとの説明を受けました。
天窓洞の見学を経て、いよいよ昼食の時間です。松崎町御宿「しんしま」で金目鯛、桜葉漬けや本枯れ鰹節といった午後の研修先の地域食材を取り入れた昼食をご提供していただきました。また、この御宿「しんしま」は、有名な左官職人であった入江長八の漆喰作品が保存されており、お昼休みの時間にはそれらの実物を間近で見学にすることもできました。
午後は、松崎町の「株式会社 松崎桜葉商店」の工場見学をさせていただきました(写真2)。桜葉漬けは、松崎町が全国生産量の70%を占めている特産品になっています。桜葉漬けには「オオシマザクラ」の葉を用いており、「クマリン」含有量が高いため、桜葉漬け特有の芳香が強い製品ができるとのことです。今ではヨーロッパなどにも輸出され、スイーツやチーズの他にも様々な料理にアレンジされており、静岡の地域食材が世界にも広がっている良い例であることがわかりました。
西伊豆町田子に移動し、創業明治15年の「カネサ鰹節商店」を訪問させていただきました(写真3)。ここでは伝統の製法である「手火山式焙乾製法」により本枯れ鰹節(「田子節」と呼ばれる)や「潮かつお」を製造しており、鰹節製造の歴史などのお話を伺いました。最後に、本枯れ鰹節の削り体験、試食をさせていただき、その深い味わいに学生も教員も深い感動を覚えました。かつては、40隻のカツオ船を擁し、40件の鰹節工場があった田子地区ですが、現在では4件の鰹節工場(カツオ船はゼロ)が残っているのみとのことでした。西伊豆地域の交通の不便さ、大規模な冷凍保存設備が難しい土地条件などが理由としてあげられるようです。
本研修を通じて、静岡県の自然環境の多様性を肌で感じることができました。また、その環境に応じた独自の地域食が生み出されてきたことを学ぶことができました。本研修に参加した多くの学生が、静岡県における自然環境の多様性を保全することや、それに密着した地域食文化を継続することに興味を持ち、このような地域資源を有効活用しながら地域の活性化につながる活動をおこなってくれることを期待します。
なお、研修旅行に先立ちまして、参加者全員が新型コロナウイルスPCR検査陰性を確認しました。また、研修中は、マスク着用や手指の消毒など感染予防を徹底しましたことを最後に付しておきます。
謝辞:本研修は静岡県立大学食品栄養科学部後援会の補助を受けて開催しました。本研修を開催するにあたりまして、ご協力いただいた方々に多大なる感謝を申しあげます。
引率教員:学科長 雨谷教授、3年生アドバイザー 谷(幸)教授、原准教授、梅澤助教、菊川助教
文責:環境生命科学科・教授 谷 幸則