2022年度フィールドワーク


9月13日、食品栄養科学部環境生命科学科2年生及び大学院環境科学専攻博士前期課程1年生が、森林生態系の環境フィールドワーク授業を行いました。本フィールドワークは、静岡大学地域フィールド科学教育研究センター森林生態系部門の水永博己教授、栗原洋介特任助教のご指導の下、森林生態系における環境試料の採取方法、現場調査方法、データ解析方法等の基礎を習得することを目的としています。

午前中は野生動物の生態調査として、前日に仕掛けた捕獲箱を回収して、森林生態系に重要な役割を担っているアカネズミやヒメネズミの捕獲を行いました。今回の調査では、28個の捕獲箱を回収し、4匹のアカネズミを捕獲できました。これらの小動物は、ドングリ等を貯蔵(一部が利用されずに発芽する)するなど、森林生態系に重要な役割を担っていることの説明を受けました。その後、実際にドングリ等を採取し、森林生態系における食料としての利用状況(ゾウムシ等の昆虫による利用など)の確認調査をおこないました。

午後には、4班に分かれ、赤外線による樹高やメジャーによる樹径の測定による成長調査、ドローンによる映像撮影による標高計測や植樹最適地の選定作業、葉形態の特徴から樹木種を調べる作業を行いました。ドローンを用いた測量では、学生が実際にドローンの操縦をして、映像撮影をおこない、最新鋭の測量に基づく森林生態系の観察法を学ぶことができました。また、葉形態からの樹木種の調査では、古くから日本の食文化に利用されている「サンショウ」「ヤブニッケイ」「ホウ」「カシワ」「ヤマザクラ」などの樹木を中心に森林利用に関する説明を受けました。

本フィールドワークは、2週間前から健康観察表による健康状態や体調不良のチェック、消毒・マスク着用を徹底するなど感染防止対策を行った上で実施しました。

研修旅行「西伊豆ジオパークと地域食」


令和4年5月30日に食品栄養科学部環境生命科学科3年生が研修旅行をおこないました。今回の研修旅行は「西伊豆のジオパークと地域食」をテーマとして、静岡県賀茂郡の松崎町、西伊豆町を訪れました。

東名高速道路・伊豆縦貫道を通り、土肥経由にて西伊豆町の堂ヶ島に到着しました。ここで、現地ジオガイドであり静岡県立大学「地域みらいづくりフェーロー」である佐野勇人氏に、伊豆ジオパークである三四郎島と天窓洞について、ご案内していただきました。特に、研修当日の午前中は、三四郎島のトンボロが最も露出する大潮の干潮時であったことから、トンボロを壮大なスケールで体験することができました(写真1)。このトンボロは、砂ではなく礫で形成された世界的にも珍しいものであり、強い西風、三四郎島本体の火山岩性地質など複数の環境要因が重なることではじめて形成されるとの説明を受けました。

天窓洞の見学を経て、いよいよ昼食の時間です。松崎町御宿「しんしま」で金目鯛、桜葉漬けや本枯れ鰹節といった午後の研修先の地域食材を取り入れた昼食をご提供していただきました。また、この御宿「しんしま」は、有名な左官職人であった入江長八の漆喰作品が保存されており、お昼休みの時間にはそれらの実物を間近で見学にすることもできました。

午後は、松崎町の「株式会社 松崎桜葉商店」の工場見学をさせていただきました(写真2)。桜葉漬けは、松崎町が全国生産量の70%を占めている特産品になっています。桜葉漬けには「オオシマザクラ」の葉を用いており、「クマリン」含有量が高いため、桜葉漬け特有の芳香が強い製品ができるとのことです。今ではヨーロッパなどにも輸出され、スイーツやチーズの他にも様々な料理にアレンジされており、静岡の地域食材が世界にも広がっている良い例であることがわかりました。


西伊豆町田子に移動し、創業明治15年の「カネサ鰹節商店」を訪問させていただきました(写真3)。ここでは伝統の製法である「手火山式焙乾製法」により本枯れ鰹節(「田子節」と呼ばれる)や「潮かつお」を製造しており、鰹節製造の歴史などのお話を伺いました。最後に、本枯れ鰹節の削り体験、試食をさせていただき、その深い味わいに学生も教員も深い感動を覚えました。かつては、40隻のカツオ船を擁し、40件の鰹節工場があった田子地区ですが、現在では4件の鰹節工場(カツオ船はゼロ)が残っているのみとのことでした。西伊豆地域の交通の不便さ、大規模な冷凍保存設備が難しい土地条件などが理由としてあげられるようです。



本研修を通じて、静岡県の自然環境の多様性を肌で感じることができました。また、その環境に応じた独自の地域食が生み出されてきたことを学ぶことができました。本研修に参加した多くの学生が、静岡県における自然環境の多様性を保全することや、それに密着した地域食文化を継続することに興味を持ち、このような地域資源を有効活用しながら地域の活性化につながる活動をおこなってくれることを期待します。

なお、研修旅行に先立ちまして、参加者全員が新型コロナウイルスPCR検査陰性を確認しました。また、研修中は、マスク着用や手指の消毒など感染予防を徹底しましたことを最後に付しておきます。

謝辞:本研修は静岡県立大学食品栄養科学部後援会の補助を受けて開催しました。本研修を開催するにあたりまして、ご協力いただいた方々に多大なる感謝を申しあげます。


引率教員:学科長 雨谷教授、3年生アドバイザー 谷(幸)教授、原准教授、梅澤助教、菊川助教
文責:環境生命科学科・教授 谷 幸則